モンゴルでメガネを修理した。
渡航数日前に、かけたまま寝てしまいつるが折れてしまったメガネ。度が強く乱視も入っているため店には在庫がなく、慌てて予備を出すも度が合わなくなっておりむしろ危険と判断、セロテープでぐるぐる巻きにしてなんとか補修。
今回の目的地は北の最果て、トナカイ遊牧民の集落である。
ウランバートルから最寄りの町ムルンまで国内線で飛び(陸路だと10時間)、そこから陸路で最寄りの村まで12時間。さらに、トナカイ遊牧民の住むタイガ山の麓まで車で40分。最後に、彼らの秋営地まで馬で最低3時間。片道1000kmの大移動だ。
ちなみにモンゴルではそろそろ冬支度が始まっているため、彼らもすでに夏ではなく秋用の土地に移動している。ここでは旧暦は健在である。
さてこの往復2000kmの移動、轍だけで草原を進み、当然のように川も渡る。車の入れない山道を馬やトナカイで行く。スーパーハードモードである。
一度など、橋が使えずそれでも川を渡るため、深夜1時に2台の車同士をロープでつないだりもした。懐中電灯で川を照らし行けそうなところを確認して、「しっかり捕まってろ!」と骨太なドライビングテクニックを見せる、こういう時のモンゴル男は本当に頼もしい。
戦々恐々とするのは私である。悪路の道中に頭をぶつけまくる車内。一体メガネは無事に過ごせるのだろうか。馬やトナカイと行く山中。ゆるんでいるつるが木の枝や葉にひっかかってしまったらという不安。土や砂がテープの隙間に入ってくる。きりのない補修作業。襲い来る後悔。もう二度とメガネのまま寝てしまったりしません。メガネケースを車中で握りしめる。
新しいメガネを作る決心をした頃首都ウランバートルに戻り、ハードモードは終了した。
首都で泊めてくれたのは、モンゴル人の友人のバヤラーちゃんである。明るくて日本語堪能な彼女は、現地の日本人から絶大な信頼を得ている。
バヤラーちゃんは首都ではなく砂漠で知られるゴビ地方の出身で、私が泊めてもらった時にはそちらから親戚が泊まりに来ていた。
来月小学校に入学する息子とともに学用品を買いに来ていた彼女のお姉さんは、少し現金を調達するために壊れたネックレスなどを持ってきていた。貴金属買取の店に持っていくと言う。
3人で店に行って、取引を終える。すると今度はバヤラーちゃんが「次は向かいのメガネ屋で、バヤラーのサングラスを直しますよー!ネジが取れちゃって、自分で針金を入れてたの〜ククク」
ここでメガネ直せるの!?
(下)に続く
岡本