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4CYCLEのうごき:カンボジアでエリサンの力を引き出す

先月、カンボジアへ行った。4CYCLE代表の田井中さんが手がけているプロジェクトがあり、代理で出張したのだ。

田井中さんは、カンボジアの首都・プノンペンから北東に120km程のコンポンチャムという町で蚕を育てている。正確に言うと、日常の世話については現地の農業学校や農家と提携し、田井中さんは時々様子を見たりしに出張している。

なぜカンボジアで、なぜ養蚕なのかという経緯はいろいろあるが、このプロジェクトの肝は、蚕が一般的な家蚕ではないという点にある。そもそもカンボジアはアジア有数のシルク生産国であり、普通に家蚕を育てる分にはすでにノウハウも蓄積されている。

しかし田井中さん達のプロジェクトで育てているのは、蚕は蚕でも「野蚕」なのだ。

野蚕とは文字通り、野生の蛾である。そこからさまざまに分類されるが、今回の種はインド原産の「エリサン」だ。繭はエリシルクと呼ばれる。

このエリシルクにはUVカットや消臭機能などが天然で備わっているのだが、紡績に技術が必要なことから、なかなか活用されてこなかった。しかし綿紡績の技術を応用することで、それに成功した日本企業がある。繊維会社のシキボウさんだ。シキボウさんがこのエリシルクを使って開発した機能性繊維「エリナチュレ」は、ベビー服や女性向けインナーに利用されている。

このエリサンの養蚕事業をカンボジアで支援・定着させ、現地農家への支援にもつなげようというのが、田井中さん達の「エリシルク・プロジェクト」なのだ。エリサンはキャッサバ(タピオカ)の葉を食べる。キャッサバを栽培するカンボジア、なかでも生産が集中しているコンポンチャムにはうってつけのプロジェクトなのである。

(写真はコンポンチャム農業学校内のキャッサバ)

シキボウさんのほか信州大学繊維学部や東京農業大学など、さまざまな機関がこのプロジェクトに参加し、エリサン量産に向けた共同研究を行っている。

しかし、実際はなかなか大変だ。コンポンチャム農業学校は、国立とはいえ小さな学校である。その一室を実験室にして卵や蛹を育てているが、当初はエアコンもなかったところを、大学と話しながらひとつずつ整備していったようだ。


とはいえ私も先月経験したが、たびたびの停電や修理などで、エアコンがあっても一定の環境を保つのはなかなか難しい。これからの季節、カンボジアは気温が上がってくるので、ますます注意が必要となる。4月にはお祭りに伴う連休もあり、蚕の世話をする学生が減ってしまう。そして、大学でうまく育てられたとしても、それを農家さんが引き継いで繭にできるかどうかはまた別問題だ。

田井中さんは昨晩からカンボジアに行かれている。今回の現地はどんな様子だろうか。

岡本

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