オマーンではairbnbで宿泊していた。
ホストのセヴァルはウズベク系のロシア人で、生まれはタシュケント、その後はモスクワで暮らしてきたらしい。
ロシア政府で長年働き、退職して石油ビジネスを開始。主にオマーンの首都・マスカットで暮らし、アブダビにもオフィスを持つ。子どもが独立して空いた部屋を、民泊用に貸し出していた。
雇用しているドライバーが病気で休んでいるとのことで、私達の滞在中、近場への運転はセヴァル自身がしてくれた。
外国人へのオマーンの紹介の仕方をよく知っている彼はよく相談に乗ってくれ、ローカルでなければたどり着けない場所にたくさん連れていってくれた。
一見、あまり感情が外に出ない。「元・公務員」と聞いてなんだか納得した。しかし運転中に何か質問すると、とても具体的に答えてくれる。特に、話題が興味のあることにかかると途端に声が大きくなり、饒舌になった。特に石油。
私は聞いた。
– 産油国は他にもあると思いますが、なぜオマーンを選んだのですか?
「オマーンという国が気に入っている。人の気質は穏やかで親切だし、町もきれいだ。自然も美しい」
– 石油そのものに関しても、メリットを感じられていますか?
「オマーンの石油ビジネスはとても面白い立場にある。現在、サウジアラビアでは8つの油田、オマーンでは24の油田が稼働している。しかし、その生産量は10倍以上の開きがある」
「これは、サウジの油田は何もしなくてもどんどん湧き出てくるので、今のところそれで良いということだ。実際には、まだ使われていない油田がいくらでもある」
「一方、オマーンの油田はひとつひとつが小さく、また開発により高度な技術を必要とする。掘ればすぐ湧いてくるという類の油田ではない」
セヴァルは言った。
「だからこそ、外国人にとって参入の余地がある。オマーンだけではその技術は開発できないからね」
自国の油田開発にテクノロジーを要することを、オマーン政府はよくわかっている。それを、周辺諸国もよく見ている。
「オマーンの入札や新技術導入は、中東全体が注視している。どのようなテクノロジーを選ぶかということが、中東全体に影響を与えているんだ」
一番難しいことをしているところが全体のバロメーターになる。どんな世界でも同じなのだ。国の大きさは関係ない。
セヴァルは、ロシアから技術者を時々出張させていると言った。ロシアも天然資源国だ。油田や天然ガス開発で培った技術を、オマーンに応用しているのだろう。
最近の石油価格下落で仕事が少し厳しくなり、アブダビのオフィスは近日中に閉じようと思っていると彼は話した。オマーンに集中するつもりらしい。きついと言いながら、話を止めようとしない彼の声は熱を帯びていた。