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世界より:タイ・インド・オマーン柑橘探訪

和歌山の柑橘農家さんのところで時々、収穫の手伝いをしている。約50種類を育てているこちらの影響で、今回の旅先でも柑橘が気になってしまった。

<タイ>

タイの首都バンコクでは、大型ショッピングモールの酒屋さんで日本のみかんリキュールを見かけた。愛知の蒲郡産だ。

農家さんに、こんなの売ってたよとメッセージすると「蒲郡!かつて、我が産地と名古屋市場を争った場所…!」と返信があった。現在はハウスみかんにシフトしているらしい。安定供給が輸出につながっている。

バンコクでのバーテンダー経験がある友人のお兄さんによると、現在バンコクでは梅酒専門のバーもできるほど日本の甘いお酒の人気が高まっているそうで、ゆず酒、みかん酒など果物系のリキュールも扱う店が増えているとのこと。

<インド>

南インド最大の町・チェンナイのスーパーでは、
チャイニーズ・マンダリン。1kg約340円。

 

オレンジ・マルタ、1kg約111円。

 

カマラ・オレンジ。1kg約204円。

の三種類を見かけた。最初のマンダリンは温州みかんに似ていて、小さめでとても甘い。オレンジ・マルタはブラッドオレンジの一種で、アメリカ原産のようだ。

カマラ・オレンジはポンカンに近いように感じた。インドのウェブサイトをいろいろ見ていると、どうやら南インドでよく販売されているようだ。ポンカンの原産地はインドと言われている。さもありなん。

道端の屋台で、炭酸ドリンクに絞られるのはインディアン・スイート・ライム。

名前の通り、甘めで穏やかな酸味のライムだ。インド全域で見かける。

 

<オマーン>

現地でお世話になったガイドさんによると、夏にはオマーン・オレンジという柑橘が穫れるそうだ。緑色だが甘く、オレンジ系の風味とのこと。しかしオマーンには自然災害として洪水があるらしく、鉄砲水で畑がやられる。なかなか収穫量が安定せず、結果、輸入が増える。

そんなわけで、大型スーパーの柑橘コーナーが凄まじい。


アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパの各地から柑橘が集まっている。
同じ種類のオレンジやレモンでも、複数の国から輸入されている。

 

まず、マンダリンオレンジだけで4種類もある。

パキスタン産のマンダリンオレンジ、1kg約112円。
パキスタン人の出稼ぎ労働者がとても多いオマーンだが、生鮮食品の輸入もあるようだ。

 

エジプト産のマンダリンオレンジ、1kg約224円。
ものすごく色が濃い。

 

中国産のマンダリンオレンジ、1kg約281円。
色は黄色寄り。

町中を歩いていると、だいたい中国人かと聞かれた。
中国人観光客も多く、プレゼンスの大きさを感じる。

 

オーストラリア産のマンダリンオレンジ、1kg約451円。

 

パキスタン産とオーストラリア産では、値段は4倍も違う。
後者を買うのはいったいどういう人なのだろうか。
オマーンからの距離や関税のほかに、何が関係しているのだろう。
何も説明は買いていなかったが、オーストラリア産は有機栽培だったりするのだろうか?

 

次はネーブルオレンジ。これも2種類ある。

トルコ産のネーブルオレンジ、1kg約112円。

 

そしてスペイン産のネーブルオレンジ、1kg約169円。

 

レモンは3種類。

ベトナム産レモン、1kg約213円。

 

インド産レモン、1kg約224円。

 

距離だけでいうとインドのほうがオマーンに近いように思うが、他に何が値段に反映されているのだろう。

そしてスイートレモン。イランなどでも冬に販売されるという。中東では一般的な柑橘なのだろうか。
1kg約253円。

 

そのほか、グレープフルーツ。1kg約168円。

 

クレメンタイン。マンダリンの一種で、アルジェリアの孤児院の庭で発見されたらしい。
なんと1kg約639円。

 

南アフリカ産バレンシアオレンジ。1kg約156円。

 

以上、一軒のスーパーで見かけた柑橘だ。他のスーパーや市場に行けば、また違った場所からの輸入物があるかもしれない。日本には、エジプト産や南アフリカ産の柑橘はまず入ってこないだろう。とても興味深い。

同じ種類のものを、違う産地から仕入れるというのも興味深い。購入層の分断が歴然として見える。パキスタンやインドからの出稼ぎ労働者、フィリピンからの家事労働者、ベドウィン系オマーン人、東アフリカ系オマーン人、アラブ系オマーン人、外国人(インド系、中国系、ヨーロッパ系…)など、オマーンのコミュニティは明確に細分化されている。当然、それぞれの生活レベルや様式と商品産地は関係しているだろう。

 

以上は生鮮柑橘だが、オマーンではレモンをドライでも使うらしい。スパイスの市場で見かけた。

そのままおやつにしたり、料理やお菓子に使ったりするそうだ。手前の黄色いものがオマーン産レモン。奥の黒いものがイラン産とのこと。

オマーン産のほうが小袋で買えたので、少しだけ求めてみた。超ドライな分、味は濃い。オマーンでは、インドから入ってきた習慣で、牛乳とスパイス入りの甘い紅茶を飲む。そのお供に、このドライレモンはうってつけのように思われた。

その後、オマーンの農業について知りたくて調べていたら、こんな報告書を見つけた。
オマーンの農業・水産大学が2010年に行った、同国の果実栽培に関するワークショップの報告書だ。「乾燥地帯における柑橘栽培」という論文も掲載されている。読んでみようと思う。

岡本

(注)価格はすべて、こちらの通貨換算ツールを使って2018年2月7日付で日本円に換算し、四捨五入したもの。

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