オマーンの首都・マスカットで、Airbnbを使い、一軒家に間借りしている。3部屋がゲスト用だ。
3階の部屋に泊まっているジャッセルはオマーン人。なぜ、オマーン人がわざわざ泊まるのだろうと思ったら、普段は地方在住とのこと。マスカットで重要な試験を控えており、勉強のために静かな環境を求めてこの家に来たそうだ。
リビングに居合わせた時に、話を聞いてみた。
– 首都に泊まり込んで勉強とは大変ですね。一体どのような試験を受けるのですか?
「僕は船の機関士なんですが、来週、その国際資格の試験があるのです」
「国際資格なので、試験範囲がとても広くて。アメリカのテキストから出るかもしれないし、イギリスのから出るかもしれないし、オーストラリアのから出るかもしれないのです」
– それは準備がとても大変!機関士ということは、普段は船上でお仕事されてるんですか?
「そうです。ガスを輸出する船の機関士をしています。日本にも行ったことありますよ、ヨカ‥?ヨカハ‥?」
横浜だった。
ここで、家のお手伝いさんのヴィヴィが彼にお茶を入れてきてくれた。
– ヴィヴィに何を頼まれたんですか?
「ミルクティーですよ。オマーンでの紅茶はインド風です」
– インドの影響が大きいのですね。オマーンの伝統的な飲み物もあるんですか?
「コーヒーですね。豆はアフリカのものですが、オマーンで加工してるんです。まだ飲まれてませんか?」
– まだです。カフェに行ったら飲めますか?
「僕が探してきますよ。ぜひ飲んでみていただきたいです。あったら持って帰ってくるので、試してみて下さい。デーツを食べながら飲むんですよ」
– えぇ!ありがとうございます!楽しみにしています。
そして彼は、テキストを抱えて出ていった。
この日の夜、大家さんと外で会った。
「ジャッセルから伝言だよ」
「コーヒーとデーツをリビングに置いておくから飲んで下さいだって。彼、帰ってくるなり、君達は家にいるかって聞いてきたんだよ」
帰宅すると、机の上には美しいコーヒーセットがデーツとともに置かれていた。
オマーンコーヒーは、少しスパイスの効いた、目覚ましに飲むのに打ってつけの味だった。
岡本